クレジットカード会社はなぜ審査をするのか?
クレジットカードというのは短期的にお金を貸すものなので、あなたの「信頼度」を計るために必ず審査という工程が入ります。返してくれるかわからない、見ず知らずの人にお金を貸したりは出来ません。
本名、住所、居住年数(賃貸か否か)、職業、今現在抱えている借金やローン、家族構成など、もろもろを踏まえた上で、あなたにお金を貸せるかどうか、信頼に足る人物かどうかを判断します。
クレジットカードの申込者数と審査に通過した人(落ちた人)の割合
クレジットカードの審査に通過する人、落ちた人の割合はデータとして出ています(信用情報機関のCICが集計したものを日本クレジット協会が収集&公表したもの)。
年度 | 申し込み者数(人) | 契約者数(審査落ちの数)(人) | 通過率(%) |
---|---|---|---|
2013 | 2,675万 | 2,025万(650万) | 75.7 |
2014 | 2,635万 | 1,996万(639万) | 75.7 |
2015 | 2,923万 | 2,250万(673万) | 77 |
2016 | 3,023万 | 2,317万(706万) | 76.6 |
2017 | 3,066万 | 2,328万(738万) | 75.9 |
2018 | 3,109万 | 2,361万(748万) | 75.9 |
大体毎年、申込者数の75%前後が審査に通過して、25%前後の人が審査落ちしており、この傾向はこの数年代わっていないことがわかります。
グラフ化してみると以下の通り。青い棒グラフと緑の棒グラフの差分が審査落ちしてしまった人ですが、割合は殆ど一定です。
75%が通過するのですから、極端に考えれば、4回申し込めば3回は審査に通過するという計算です(実際のところは1人の人が何度も申し込んで複数回審査落ちしていることが多く、もっと審査通過率は高いと考えられます)。
以上のデータから、クレジットカードの審査はあまり恐れる必要はないということがわかると思いますし、落ちても悲しむ必要は全くありません。
審査の中身は、法律の規制×ブラックボックス
カード会社の審査は大きく分けて2つの段階があります。
まず、割賦販売法という法律の基準をクリアしているかどうかの審査、次に、カード会社独自の審査、です。
割賦販売法の包括クレジットの説明を経済産業省が簡単に説明したものは以下の通り。
限度額が30万円以下のクレジットカードを発行する場合は、過剰な債務や延滞等を確認する簡易な審査で発行可能とします。
つまり過剰な債務や延滞等がある場合にはカードを発行していはいけないと法律で定められているということです。
さらに、カードの限度額が最低30万円以上の場合には支払可能見込額((年収など-生活維持費(※)-クレジット債務)×0.9)を越える利用枠のクレジットカードが新規発行できないことも改正割賦販売法という法律で定められています(限度額が30万円以下で発行されるか、審査に落ちる)。
例えば利用可能枠が~200万円の三井住友カード ゴールドなどは必ず支払見込額を確認されて、基準に満たなければカード会社の審査前に門前払いということになります。
※生活維持費は表のように定められています(住んでいる地域で85%−100%の範囲で規定)
住居携帯 | 4人世帯以上 | 3人世帯 | 2人世帯 | 1人世帯 |
---|---|---|---|---|
持ち家&住宅ローン無し/持ち家&賃貸負担無し | 200万円 | 169万円 | 136万円 | 90万円 |
持ち家&住宅ローン有り/持ち家無し&賃貸負担有り | 240万円 | 209万円 | 177万円 | 116万円 |
年収が300万円、4人世帯以上住宅ローンあり(クレジット債務なし)の方だと、支払可能見込額は(300万−240万)×0.9=54万、なので、利用枠が50万円からの三井住友カード ゴールドをギリギリ申し込む権利を得ることができるとわかります。
これらを最低限クリアして初めてクレジットカード発行会社独自の審査に移行します。
このクレジットカード発行会社(イシュア)の審査は、ある程度の基準(年齢が18歳以上、など)は明示していますが、それ以上は決して表には出さずブラックボックスを保っていますし、そもそも審査方法や基準も時代に合わせて変わってきます。
クレジットカードもビジネスですから、審査内容も時代に合わせて変化させていかなければいけません。
- ブラックカードを発行しすぎてありがたみ(ステータス性)がなくなってきたから基準を厳しくする。
- クレカの代わりになるような決済方法の対抗馬が出てきたらカードの基準を低くしてでも発行枚数を増やした方が良い。
- 若者の人口が減ってきたならカードの基準を下げてでも若者にカードを作っておいてもらったほうが良い。
- 発行スピードも売りにしたいから審査は曖昧でもスピード重視にする。
などなどケースバイケースで柔軟に対応していく必要があります。
なので、ブラックボックスにしておいたほうが何かと自由がきいて都合が良い、というのもカード会社の立場になってみれば納得出来ます(もちろん顧客としては審査基準はハッキリとして欲しいものですが・・・)。
逆に、申し込む立場の我々はあまり難しく考えすぎないのが得策です(考えるだけ時間のムダかと;・・・)。きちんと公表されている法律の部分、割賦販売法の部分だけ遵守できているかどうか確認しましょう。
カード会社によって大きく異なる審査方法
例えば、筆者(自営業)がとある有名プロパー系クレジットカード2枚(審査の難しさは同等クラスと言われているAカードとBカード(仮称)の2枚)に申し込んだ際にもカード会社によって大きな違いが見られました。
両カード共に申し込む際には、職業欄には自営業、屋号(自営業者が自由に設定できる呼称のようなもの)には、届けを出していなかった(空欄で税務署に提出した)ので本名を記載しました。
その結果・・・
1:Aカード
確認の電話がかかってきて「屋号は設定しておらず本名のままでよろしかったでしょうか?」という問いだったので、「そうです、屋号は設定しておりません」と答えて、審査通過→無事カード発行。
2:Bカード
確認の電話がかかってきて「屋号欄が本名で記載されているのですが、正確な屋号はなんでしょうか?」と問われたので「屋号は設定しておりません」とお答えしたところ、「それでは運営しているウェブサイトをお教え頂けますか?」と言われました(事業内容欄にはウェブサイト運営としていました)。
カード会社に運営HPを教える意味がよくわからなかったので「何故ですか?」と尋ねたところ「そちらを屋号の代わりに登録させていただきますので絶対に必要になります・・・」とのこと。筆者はカード会社に運営サイトまで教えるのがあまりに怖かったので、「すいません、ちょっと怖くて教えられないのでカードの発行は結構です」とこちらからお断りさせていただきました。
つまり、Aカードでは自営業者は屋号を設定している必要がなく、Bカードでは自営業者は屋号を設定していないと審査に通らないようになっていたわけです。
世の中が自営業に対して厳しいことは重々承知しているので、「審査方法がおかしいじゃないか!」ということを申し上げたいのではなく、「Bカードの審査の対応をした確認電話のお姉さんが勉強不足なんじゃ?」ということを申し上げたいわけでもなく、カード会社によって審査方法、審査基準が違うことが明確になった出来事だった、ということです(むしろBカードの対応のほうが当たり前とすら思っています)。
屋号の存在は、自営業を経験したことがある人じゃないとなかなか認知はしていないと思いますので、社内の審査対応マニュアルに差が出やすい部分だったのでしょう。
※ちなみに、検索すればいくらでも出てきますが、自営業ではお店を構えるような方ならともかく、必ずしも屋号を設定する必要はありません。屋号は空欄で申告書を堤出しても受理されます。
審査に使われるクレジットカードヒストリーを知る
基本的にブラックボックスなクレジットカードの審査。しかしながら、カード会社が必ず、共通して確認している情報があります。それがあなたのクレジットカードヒストリー(以下クレヒス)です。クレヒスとは、クレジットカードの支払いがキチンと行われてきたかどうか、すなわちあなたのこれまでの経歴を示す履歴書のようなものです。
あなたのクレヒスを管理しているのはCredit Infomation Center(通称CIC)を初めとする情報管理機関(Credit Card Infomation Network、通称CRIN)。カード会社は独自の審査基準を当てはめる前に、まずはこのCICから提供される信用情報を参照して、あなたにカードを発行出来るか否かを判断します。
逆に、支払いが滞った場合はカード会社からCICを始めとした信用情報機関に情報が渡ります。
もし何度クレジットカードに申し込んでも審査落ちをしてしまうようだったら、一度CICに請求をして(発行料がかかりますが)あなたの情報がどのように登録されているか見てみると良いでしょう。もしかしたら思わぬところで未払履歴が見つかるかもしれません。
→CICにあなたの信用情報(クレヒス)の開示請求をする手順はこちら
未払履歴が残ってしまう事例の代表がケータイ料金の滞納や延滞。CICに情報の開示を請求してみるとわかりますが、例えばスマートフォンの支払いを分割にしている方など、分割払いの情報はクレジット情報としてCICに保存されています。
もしもこのドルマークの部分に「A」や「P」というマークが付いていた場合、未入金や一部のみの入金を意味するものなので、新しくカードを作ろうと思っても、審査のときに不利な材料になってしまいます。
審査に落ちた場合、いつまで次の申し込みは出来ないの?
カードを作ろうとして審査に落ちてしまった場合、連続してカードを申し込んでも審査に通ることはありません。具体的には、5ヶ月間は同じカードには申し込んでも審査には通りません。なぜなら、クレジットカードの申し込み履歴は5ヶ月間CICなどの信用情報機関に保存されているからです。
短期間にあまりにもたくさんカードを申し込んでいた場合にも、不信感を持たれてカードをの発行は出来なくなります。別会社のカードに同時に申し込んでも、その情報はCICに一元化されているので、バレバレです。上の画像を見てみてもJCBのカードと三井住友のカードの申し込み情報が一緒になって管理されているのがお分かり頂けると思います。
また、もしも支払いが滞ったりしてしまった場合は、最長5年間もの間、その情報が信用機関に保管されます。延滞をすることでクレヒスの信用度は落ちますが、1度延滞してしまったら全てのカードが作れなくなるということではなく、ステータスカードを筆頭に、作れないカードも出てくる、ということです。
いわゆるブラックリストと呼ばれるのはこの支払いが滞ってしまった情報が残ってしまっている人のこと(ドルマークの代わりに「A」や「P」などのマークが付いている人のこと)で、最長で5年間はブラックリスト入り、という言われ方をします。ただし、ブラックリストというのは公式な言い方ではなく、あくまで便宜的にそう呼ばれるだけです。
ブラックリストという言葉を聞くともうどのカードも作れないような響きがありますが、1度や2度の延滞なら作れるカードも存在します。
審査が怖いからクレジットカードを作らない、は正解か?
審査されるのが怖いからクレジットカードを作らない、もしくは、審査で情報を取られるのが怖い、という方は思いの外多いようです。ですが、カード会社の審査を恐れてクレジットカードを作ること自体を諦めることは、個人的にはあまりオススメしません(もちろん個人の考え方に寄りますが)。
なぜなら、アメリカで導入されているクレジットカードスコア(クレヒスのような略称は検索しても見当たりませんでしたがあえて言うならクレスコ?)が日本でも導入された場合、クレジットカードの使用履歴がないことは、新しいクレジットカードを作ろうとしたときに審査に通らないことはもちろん、不動産を購入する際の審査や賃貸のときの審査、ローンの金利の判断、場合によっては就職にまで不利になり得るからです。
クレジットカードスコアとは、アメリカでは一般化しているあなたの信用の偏差値のようなものです。定期的にクレカを使って、きちんと支払いまで済ませている人(クレヒスがしっかりしている人)はクレジットカードスコアが高くなり、社会的な信用の偏差値が上がります。
逆に、クレカを持たずに、支払い履歴がない人は、クレジットカードスコアを算出することすら出来ないので、カードを使っている人よりも社会的な信用が低くなるのです。
「そんなの管理社会が徹底しているアメリカならではでしょー」と甘く見てはいられません。日本では2018年現在、まだこのクレジットカードスコアは導入されていませんが、アメリカから日本政府に送られてくる年次改革要望書(小泉内閣時代)には「クレジットカードスコアを日本でも導入しなさいよ」という項目もありましたから、アメリカのゴキゲンを取るために現在の政府の一存で、実際に導入される確率は低くはないと言えます。
クレジットカードスコアが導入されたときに審査を恐れてカードを作っていなかった人は、カードを作って0から信頼度を上げていかなければいけないので、これまで定期的にカードを使ってきた人よりも不利になります。なので、クレジットカードは作って、定期的に利用し、信頼度を上げて、いつでも審査に通る状態を作っておくのが望ましいというのが筆者の見解です。
語弊を恐れずにいえば、クレジットカードは確かに見方によっては短期間の小さな借金ですが、借金を返す力があるということを見せたほうが社会的な信頼は上がる、ということです。逆に、クレジットカードは借金だから怖いと言っている人=返済能力がない=信用出来ない、と見なされるのがこのクレジットカードスコアが導入された社会です(よくよく考えてみれば現代でお金持ちなのにクレジットカードを作っていない人って殆どいないかも・・・?)。
ちなみに、学生の方や新社会人の方は、審査基準が低く設定されている登竜門としてのカード(学生カードや年齢制限カード)が用意されているのでそこからクレヒスを積み上げていけば良いでしょう。
まとめ
以上、長くなってしまいましたが、実際はカードによって審査基準は大きく異なるので申し込んで見るまでわからないですし、「実は」審査が甘いようなクレジットカードもたくさん存在します。
クレジットカードの審査は基本的には減点方式です。もしも支払いの延滞のような「減点」に心当たりがないようであれば、国内で発行されている8割のカードを作れると思っても良いと思います(筆者個人の見解です)。
最後に。当たり前のことですが、審査に通過しようと思って年収などで虚偽の情報を記入するのはやめましょう。仮にカードが作れたとしても、最悪の場合、詐欺罪に当たる可能性もありますから、必ず真実だけを記載するようにしてください。クレカの審査は大学入試のように学科試験があるわけではなく、ありのままの自分を判断されるだけですので、ダメだったらそれはそれで割り切ることも大切です。